要旨
四国の水不足の本体は、雨が少ないこと自体よりも、尽きたあとに何日持つかが制度になっていないことにあります。早明浦ダムの利水——飲み水・農業用水・工業用水など、人が使うための水——が本体で、発電用水と四国電力のダムは「その都度借りる隠れ予備」です。2026年9月も、18年ぶりに協議会が発電事業者へ協力を依頼して承諾を取る、という形になりました。水量はあるのに、本体が尽きたあとの予備として使えません。ダムの水面が下がっても、洪水を防ぐための空容量や、発電のためだけに残してある水は、報道の「利水の貯水率」には数えません。
やる順は次のとおりです。土木が先ではありません。
- ダム間協定(今冬)。貯水率で自動放流します。対象・量・順番・復帰を紙に落とします。
- 減電補償を国と利水者が払います。無償の善意はやめます。
- その水は平時の水道に組み込みません。予備に固定します。
- 香川側に宝山湖型の調整池を足します。空の早明浦を経由しません。
- 吉野川の発電ダムは、まず低い位置の取水と堆砂除去でタンクとして使います。嵩上げは必要な地点だけです。
- 上水の最終層として海水淡水化を置きます。農業用水には使いません。
- 揚水の電池置き換えは、水を空ける増分だけを渇水予算で見ます。本川発電所一式を国費で買う必要はありません。
東日本からのパイプライン、水力の全廃、香川の地下水増掘、濃縮水のゼロ放流は、費用・政治・効果のいずれかで外します。
現状認識
2026年の局面が示したこと
早明浦ダム(高知県土佐町・大川村、管理者:独立行政法人水資源機構)は、洪水調節・利水・発電を兼ねる多目的ダムです。一つの堤体で、治水(洪水を貯める空容量)と利水と発電を兼ねます。利根川の矢木沢・奈良俣、淀川の日吉なども同じ型です。水資源機構は、利根川・淀川・吉野川などの広域水道・用水を国に代わって建設・管理する法人で、旧水資源開発公団です。
洪水期の利水容量1億6,600万トンが、報道でいう「貯水率」の分母になります。発電専用は洪水期2,600万トン、死水は1,000万トンです。死水(底水)は取水口より下にあり、通常の設備では汲めません。ポンプを足せば非常用には使えますが、濁りやマンガンが出やすい層です。マンガンは湖底や地層から出る金属で、多いと黒い水や臭いの原因になります。浄水場で取れますが、通常より薬品と時間が要ります。洪水期は西日本ではおおむね7月1日から10月10日で、台風に備えて水位を下げておく期間です。
利水がゼロでも、湖は物理的に空ではありません。旧大川村役場の1階が顔を出すのは、利水の水面がそこまで下がった、という印です。2005年・2008年・2026年と、同じ建物が何度も全国ニュースになっています。
2026年8月28日から第4次取水制限に入りました(香川60%、徳島の新規用水60%)。取水制限とは、ダムや川から取ってよい水量を、協定で段階的に削ることです。第1次、第2次と上がるにつれ、農業・工業・水道の順で痛みが重くなります。高松市と丸亀市の一部では、その前から減圧給水も始まっています。減圧給水は、蛇口を完全に止めず、水圧を下げて出る量を抑えることです。断水の一段手前で、風呂が溜まりにくくなり、高層階ほど先に影響が出ます。
9月4日、吉野川水系水利用連絡協議会は、利水がゼロになったあと、発電用水を上水道へ緊急補給すると決めました。この協議会は、四国地方整備局・四県・水資源機構・発電事業者などでつくる、吉野川の水の分け方を決める場です。新しい法律上の機関ではなく、慣行の協議会です。利根川にも「利根川水系渇水対策連絡協議会」があり、同じ型です。上水(上水道)は、家庭や事業所の蛇口に届く飲み水用の水道で、農業用水・工業用水と区別します。
補給量は徳島用水が毎秒1.95トン(日量約16.8万トン)、香川用水が毎秒1.85トン(日量約16万トン)です。小学校の25メートルプール(約420トン)に換算すると、香川分だけで1日あたり約380杯です。高松市の1日の給水量を、ほぼ1市分上回る規模です。香川は宝山湖(300万トン、約19日分)が先で、発電用水は宝山湖が尽きる1〜2日前から、という順です。実施されれば2008年以来18年ぶりです。電源開発(J-POWER)と四国電力が承諾しました。
流入がほぼ無い期間、利水は日あたり約300万トン減りました(8月28日の21.8%から9月4日の8.8%)。発電用水約1,700万トンは、この減り方なら1週間前後の層に過ぎません。2005年は、貯水率0%の直後に台風14号が来て、1日で利水が100%を超えました。だから「何週間持つか」が、そのまま断水の可否になります。1週間の層を3週間にできれば、台風や秋雨に追いつける年が増えます。平成6年(1994年)の全国渇水では、利根川上流も枯渇寸前まで行き、東京都が給水制限を実施しました。あのときも、発電用水の融通と、台風・秋雨のタイミングが分かれ目でした。早明浦だけが特別なのではなく、日本の水がめに共通する脆さです。
水は四国に無いのではありません
早明浦が開発する新規用水は年8.63億トンです。新規用水とは、ダム建設によって新たに安定して取れるようになった水量で、ダムの前から田や集落が持っていた慣行水利権(昔からの取り分)とは別です。下流の徳島が慣行分を厚く持っているのは、この区別があるからです。水利権は、川やダムから一定の量を取ってよいという法律上の権利です。新しい権利は許可が要り、古い慣行は民法と河川法の間で守られてきました。
配分は徳島48%(4.10億)、香川29%(2.47億)、愛媛19%、高知4%(0.39億)です。香川用水は農業1.05億、上水道1.22億、工業0.20億です。香川用水は、池田ダム付近から阿讃山脈をトンネルで抜き、香川へ送る用水で、1974年に通水が始まりました。幹線は約106kmです。東京都の水道が利根川と荒川に依存するように、香川の水道は吉野川に依存しています。距離は短いですが、山一つ向こうの雨待ちである点は同じです。高松市水道の約55%が香川用水に依存しています。農業は、通水後もため池がなお大きいです。県内のため池は約1万2千箇所、密度は全国1位です。満濃池は弘仁12年(821年)に空海が修築したと伝えられ、讃岐の水の記憶そのものです。
足りないのは「四国の水」ではなく、少雨年に香川・徳島の蛇口と田が、早明浦一本に依存している構造です。高知市は鏡川・仁淀川・高知分水の三水源を持ちます。愛媛の西条市は「打ち抜き」と呼ばれる自噴地下水が厚く、うどん店が井戸に集まる讃岐平野とは地質が違います。主戦場は讃岐平野と、吉野川下流の都市用水です。
福岡都市圏も、1978年と1994年の大渇水で「水が無い」のではなく「筑後川とダムに依存している」ことが露呈しました。1978年は福岡市が時間給水に入り、204日に及ぶ制限が続きました。だから海の淡水化(まみずピア)と、筑後川からの導水を重ねました。導水とは、川やダムの水をトンネルや水路で別の地域へ送ることです。香川用水も、福岡の筑後川導水も、利根川の武蔵水路も導水です。雨そのものは増えません。降った場所から使う場所へ移します。香川の構造は、福岡の1994年に近いです。
いまの予備が脆い理由
国土交通省は、発電容量からの緊急放流を「譲り合い」と位置づけ、計画上の効果量に数えません。平成6年(1994年)の全国的な大渇水では、利根川でも吉野川でも発電用水を無償で借りました。早明浦では2005年に大橋・大森川・穴内川、2008年に穴内川760万トン協定、と例外が続きました。例外は、回復した翌年に優先度が落ちます。2008年のあと18年、同じお願いを2026年に繰り返したことが、その証拠です。
発電専用容量は、多目的ダムのうち、発電会社が落差を保つために持っている層です。利水が空になっても、この層は残ります。水道計画の「10年に1度の渇水でも足りるか」という利水安全度の計算には、原則として入れません。入れられないのは、法律上の権利ではなく、その都度の協力だからです。気候変動で「10年に1度」が「5年に1度」に近づくと、この隙間が毎回の本番になります。
予備を厚くすることと、貯水量を増やすことは別です。序盤から水道として並列で抜くと、終わりの予備は薄くなります。用途を全部「水道」に書き換えると、予備ではなく本会計になります。カリフォルニア州が干ばつ時に農業水利を都市へ一時移転するときも、「権利の名前を都市用水に変える」のではなく、「今年の数週間分を買う」契約にしています。名前を変えると、翌年も使い切るからです。オーストラリアのマレー・ダーリング流域も、権利の残高を見えるようにしたうえで、干ばつ年だけ取引しています。
原則
- 雨の総量は増えません。増やす対象は、尽きたあとの日数と、出す手続きの確実性です。
- 目的が費用を負担します。水のために電気を止めるなら、失った電力量は電力会社の自己負担にしません。電気の便益(昼間の太陽光余りを吸う電池など)は電気側が払います。日本の多目的ダムは、治水・利水・発電で建設費を分けるアロケーションで、すでにこの原則を使っています。アロケーションは目的ごとの負担割合の決め方です。日本では、その目的だけで造った場合の費用(身替り建設費)を比べる「分離費用身替り妥当支出法」が使われます。治水は国、水道は県と市、発電は電力会社、という分担の根拠です。渇水予備も、同じ考え方で払い手を決められます。
- 予備は本会計にしません。協定で確保した水は、貯水率○%まで触りません。
- 場所が違うこと自体が予備です。早明浦の下流(穴内川・松尾川)と需要地(宝山湖・ため池)は、空の本体を経由しません。東京でも、利根川の水を荒川へ移す武蔵水路と、浄水場間の朝霞水路が「場所の違う予備」として機能しています。
- 上水と農業を混ぜません。淡水化は蛇口の最終層です。田はダム・ため池・協定の水と、再生水で持ちます。イスラエルも、海水淡水化は都市用水が主で、農業の主水源は処理下水です。
- 先に紙、後にコンクリートです。協定なしの工事は、増えた分を日常に吸い込まれて終わります。
提言(実施順)
提言は9本です。1〜4がソフト(制度と契約)、5〜8がハード(施設)、9が棄却リストです。番号が優先順位です。覚書と操作規則の二段、気象の停止条項、徳島・高知の対価、水質、本四連系は、各提言の実装に織り込みます。
提言1 今冬、吉野川本流のダム間協定を結びます
吉野川水系水利用連絡協議会を改廃する必要はありません。その下に、ダム単位の放出協定を足します。穴内川ダムの760万トン協定(2008年渇水のあと。期限が近い)を原型にし、対象を長沢・大橋・大森川・松尾川、および早明浦の発電専用容量に広げます。新しい組織は作りません。署名者は水資源機構、J-POWER、四国電力、四国地方整備局、四県です。
今冬に書けるのは、ダムの操作規則そのものではありません。操作規則は、ダムがいつ、どれだけ放流するかを定めた河川法上のルールで、管理者が独断で変えられません。国土交通大臣の認可が要ります。改正は河川法と特定多目的ダム法の手続きで、年単位になります。2008年の穴内川も、実態は覚書・協定です。覚書は、関係者が先に約束する文書で、法律の規則そのものより弱い代わりに、早く書けます。二段にします。今冬は覚書(発動条件・量・単価の幅)、翌年以降に操作規則へ落とします。覚書を「お願い」に戻さないため、単価と上限を数字で書いて公表します。利根川の渇水調整も、まず協議会の申し合わせで動き、規則の改正は後追いになることが多いです。穴内川の760万トンは、徳島県の要求があれば毎秒2.0トンで出す、という約定です。毎秒2トンは、25メートルプール約7杯分を1時間で出す速さです。
協定に書く項目は次のとおりです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 発動 | 早明浦利水が10%、および0%で自動です。その場の「お願い」を待ちません |
| 停止 | 72時間以内に流域平均で一定以上の雨の予報が出ていれば、放出を止めます。止めても補償の起算は続けます(2005年型の空撃ち防止) |
| 順番 | ①穴内川・松尾川(早明浦の下流)②長沢・大橋・大森川 ③早明浦発電専用 |
| 上限 | 各ダムの「渇水予備」だけを出します。残りは発電に残します |
| 補償 | 代替調達の実費(本四連系からの輸入と火力の焚き増し)をあらかじめ決めます |
| 水質 | 取水高さ、濁度の上限、浄水側の粉末活性炭とマンガン処理の待機 |
| 復帰 | 早明浦が一定の貯水率まで戻ったら放流を止め、予備を積み直します |
| 対価 | 徳島・高知への見返りを同じ紙に書きます |
銅山川3ダム(富郷・柳瀬・新宮)と那賀川は、別協議会・別水系のままにします。一本化すると、愛媛・徳島の銅山川分水争い(戦前から続く第一次〜第五次分水協定。新居浜の住友鉱山と下流徳島の対立が原型です)が再燃します。利根川の八ッ場と霞ヶ浦を一つの協議会にしないのと同じで、流域の歴史を無視した統合は遅くなります。
工事ゼロで、0%以降の日数と確実性が増えます。2005年・2008年・2026年に実際に出した水を、例外から原則にします。電力側は補償と上限(全部は出さないこと)が条件です。県側は「自動」が条件です。両方を同時に書かないと結べません。今の渇水が記憶にある冬が、次の20年分の窓口です。回復した翌春には、優先度が落ちます。平成6年渇水のあと全国で「次は制度にする」と言い、発電用水はいまも譲り合いのままです。同じ失敗を、早明浦で三度目にしない、というのがこの提言の時間制限です。
放流設備は既にあります。穴内川は毎秒2トンで出す約定済みです。物理の新課題は、大橋ダムを下池に使う本川揚水の運用水位くらいです。大橋の条項に、渇水モードでは揚水を制限する、と書きます。
徳島の対価は、紀伊水道側の淡水化1基を国費で先に置き、徳島の上水保険にすることです。その代わり、早明浦利水10%以下で徳島が使わなかった新規水利の一部を、香川が有償で買います。無償振替は求めません。カリフォルニアの水取引と同じで、値段が付くと議会を通りやすいです。高知の対価は、減電補償の一部をダム所在町村(土佐町、本山町、大川村など)の基金に落とすことです。治水容量は削りません。早明浦再生はいま、利水700万トンを洪水期の治水へ振り替え中です。「また利水か」と同時に出さないことが、水源地の条件です。水源地域は、ダム湖に沈む、またはダムの恩恵を直接は受けにくい上流域の町村です。水源地域対策特別措置法(水特法)で、道路や産業、交付金などの見返りを定めます。高知がタンク役を引き受けるなら、その法律の延長で金が落ちる設計が要ります。
提言2 減電補償を渇水対策として制度化します
発電用水の緊急放流を、無償の協力にしません。水利転用の減電補償や、洪水前にダムを空ける事前放流の損失補償(国土交通省が2020年度に創設)と同じ思想で、渇水放出の補償を協定に固定します。単価は市場の平均電力価格ではなく、代替調達の実費です。
減電補償とは、発電に使うはずだった水を他用途に回したとき、減った発電量を金銭で埋めることです。ダム建設や導水で下流の水力が減るときに、日本では繰り返し使ってきました。矢木沢ダムの建設時も、東京電力の水力減に補償が付いています。事前放流とは、台風の数日前に利水の水をあえて流し、洪水を貯める空を作ることです。空にしたあとに雨が来ないと利水が損をするので、国が補償する制度が2020年に入りました。西日本豪雨のあと、全国のダムに広がりました。渇水の放出は、方向が逆で思想は同じです。「公共のために発電の水を動かすなら、電気の損は公共が払う」です。
払い手は四国電力ではありません。水を使う側です。早明浦の利水分も、香川県は約4割を負担しました。受益は香川・徳島が厚く、水系は四県にまたがるので、国(水資源・四国地方整備局)が立て、利水者が分担します。香川用水と同じ構造です。
本四連系線(岡山・児島〜香川・坂出、瀬戸大橋に添架)は、本州と四国を結ぶ50万ボルトの送電線です。瀬戸大橋のトラス下にケーブルを添架した、世界的にも珍しい構造です。物理容量240万キロワット、運用容量は中国向き約145万キロワット・四国向き約120万キロワット規模です。本川発電所61.5万キロワットが止まっても、連系の枠内に収まります。水を出す週は、四国の水力を減らし、本州から電気を入れます。1994年の渇水時も、電力は広域融通で凌いだ経験があります。四国で電気が足りない週は中国電力エリアから買い、余っている週は逆に出します。水の香川用水に対して、電気の香川用水、と言ってよいインフラです。電池を渇水対策の前提にしなくてよい、というのがここの要点です。
「電力に払うのか」という反発には、1994年以来の無償が、18年に一度の政治判断を固定した、と答えます。単価を公開し、上限水量とセットにします。放出した週の逸失電力であり、本川を電池に置き切る約2,000億円とは桁が違います。ここが国費の第一号です。
提言3 予備容量をリングフェンスします
協定で確保したトンは、第1〜3次取水制限の段階では使いません。常用の水道・農業に組み込みません。ラベルを「水道」に変えることが目的ではありません。
リングフェンスとは、ある資金や資産を他の用途に流用できないよう、囲っておくことです。銀行の顧客資産や、年金の積立で使う言い方です。ここでは「渇水予備の水を、平時の給水計画に算入しない」という意味です。英国の水道民営化でも、顧客資産を親会社の借金からリングフェンスする、という使い方があります。水を金に例えるのは正確ではありませんが、「手を付けられない層」という意味では同じです。
水力を止めてダムを水道専用にすると、同じ水を序盤から使います。予備は薄くなります。発電は従属発電のままでよいです。従属発電とは、水道や農業のために放す水で、ついでに発電することです。放す量と時刻は水の方が決め、電気は従います。早明浦の発電の一部は、もともとこの型です。止める必要はありません。
減圧給水の夜に、知事が「穴内川にまだ水があるのに出せないのか」と問われて耐える設計が要ります。予備は二層にします。10%で「公開予備」(上水優先と日数を広報済み)を切り、0%で最終層を切ります。最終層の存在を関係者だけが知る、というやり方は採りません。代わりに、最終層の日数と用途(上水のみ、農業は対象外)をあらかじめ広報します。「田を守る水」と「蛇口の水」を分けて見せると、序盤の放出圧力を農業側に逃がせます。香川の番水は、この分け方の土台になります。番水とは、ため池や水路の水を、集落や日で交代して使う慣行です。讃岐では中世以来の渇水適応です。満濃池の水掛りでも、上流と下流で順番が決まっています。制度を新造するより、慣行に補償を載せる方が通ります。
議会と報道向けには、「予備として確保した水量」を毎年公開する方が、用途名の書き換えより強いです。オーストラリアのマレー・ダーリング流域では、権利の残高を市場で見えるようにしたことが、干ばつ時の取引を可能にしました。見えない予備は、結局その場の政治に負けます。
提言4 穴内川方式を吉野川本流の発電ダムに横展開します
提言1の対象の中身です。優先は下流側です。空の早明浦を経由しない水が、香川用水の取水(池田)に効くからです。
- 穴内川(総貯水4,626万トン、既に760万トン)。更新時に量を積み増せるかだけ見ます。高知への国分川分水を渇水時に絞る取引も、ここに書きます。
- 松尾川(池田に近い)。空の早明浦を経由せず、香川用水の取水側に効きます。
- 長沢・大橋・大森川。上流なので、出した水は早明浦に入ります。利水が残っているうちは補給、ゼロのあとは河道を通じて池田へ、と段階を分けます。
- 稲村(580万トン、流域2.4平方キロメートル)。雨では増えません。本川の上池であり、一度下流に流せば終わりです。最後の一回の予備に限ります。
自流式発電所に管を引く工事は、この次でよいです。少雨年は川自体が細いです。管を付けても、2026年のように流入が毎秒0トンの日が続く年には、水が出ません。スイスやノルウェーの山岳水力が「水が無い年は発電も細い」のと同じで、流れ込みは予備になりません。
中空重力式(穴内川・大森川)の嵩上げは構造が面倒です。中空重力ダムは、内部に空洞を持つコンクリートダムで、材料を減らす代わりに、後からの嵩上げが通常の重力式より難しい型です。四国ではこの2基が珍しい例です。堆砂で実質容量が減っている地点は、嵩上げより浚渫の方がトンあたり安い可能性があります。堆砂とは、川の土砂がダム湖の底に積もることです。設計時に堆砂容量を見込みますが、それを超えると利水も治水も減ります。浚渫(しゅんせつ)は、底の土を掘って外へ出すことです。土の捨て場が無いと、工事は始まりません。那賀川の小見野々ダム(四国電力)は、堆砂で容量の約6割が減った先例です。那賀川は別水系なので第一陣には入れませんが、技術の教訓として吉野川側の堆砂調査に先に使います。米国開拓局のダムでも、嵩上げより堆砂管理の方が費用対効果で勝つ地点があります。
提言5 需要地の調整池を足します(宝山湖型)
香川の宝山湖(2009年、有効貯水300万トン)は、早明浦が空でも県内で使えます。2026年も第3次制限以降に稼働し、0%後の時間を稼ぐ設計になっています。香川の緊急16万トン/日なら、満水から約19日です。同じ思想のタンクを、香川に足します。ため池の浚渫と相互融通も、需要地予備です。
1万2千箇所のため池は、満っている池と空の池が同時に存在します。管とポンプで西讃・中讃・東讃を繋ぐ方が、宝山湖をもう一つ掘るより用地が小さいことがあります。権利が細かいのが壁です。土地改良区の組合間契約を、提言1と同じ冬に雛形化します。土地改良区は、農業用水路やため池を維持する農家の組合法人です。水利権の実務上の持ち主であることが多く、県や市が単独では動かせません。協定の相手は、行政だけでなく改良区です。愛知の明治用水や、埼玉の見沼代用水も、水路で分散した貯留を繋いでいます。讃岐は点の密度がすでに高いので、点を線にする方が、点を増やすより早いです。兵庫の東播磨もため池が多く、渇水時の融通が論点になっています。隣県の先例を、雛形に使えます。
雨が無い年にタンクが空なら意味がありません。平時に満水を維持する運用規則を、提言3と同じ思想で先に書きます。豊水年の香川用水と自己水源で積み、渇水年まで触らない、が宝山湖の使い方です。福岡の油山ダムや、沖縄のダム群も、「普段は満水に近く保ち、渇水で初めて大きく落とす」運用です。
提言6 既設の低い位置の取水を足し、必要な地点だけを嵩上げします
更地のダムより、既設の放流設備増設・嵩上げの方が早いことが多いです。早明浦再生は容量振替と放流設備で約11年・約500億円、完成は令和10年度目標で、なお堤体の削孔中です。容量振替とは、ダムの中の「洪水用の空」と「水用の満」の境目を、法律と操作規則のうえで動かすことです。コンクリートを足さずに、使い方で容量を増やします。早明浦は2022年7月から、利水700万トンを洪水期の治水へ振り替えています。香川の長柄ダム再開発は既設なのに工期が延びました。利根川上流の薗原ダム嵩上げの試算は約20年・約1,400億円です。安い保証はありませんが、水没と環境影響評価の政治コストは新設より小さいです。環境影響評価(アセスメント)は、事業が自然と生活に与える影響を、着工前に調べて公表する手続きです。大型ダムでは数年かかります。既設の堤体を触る工事は、新設より範囲が狭いことが多いです。
ただし、嵩上げを「協定の次のハード」に置きすぎない方がよいです。先にやるのは次の二つです。
- 低い位置の取水。発電ダムの低水位の水は、濁度、マンガン、硫化水素、水温が上水の原水として辛いです。池田・香川の浄水場は早明浦系統用に設計されています。緊急放流が「量」だけだと、届いても飲めません。琵琶湖の選択取水(深さによって水質が違う水を選び分ける)や、ダム湖の曝気循環(空気を送り、湖をかき混ぜて水質を保つ)は、すでに日本で使っている技術です。死水1,000万トンも、非常用ポンプとマンガン処理が無ければ数字だけです。早明浦再生の放流管増設に、非常用の低水取水を相乗りさせます。
- 堆砂除去。既設の失われたトンを取り戻します。浚渫土の捨て場が政治になります。公共事業の埋め戻しへの指定を先に決めます。
嵩上げの目的は、総貯水の最大化ではなく、渇水予備として切れる容量を増やすことです。治水を削って利水に振り替える案は出しません。逆方向は、1975年の台風5号(計画を上回る毎秒7,200トンが流入し、直下流の早明浦発電所や民家に被害)の記憶とぶつかります。洪水期の安全は削りません。
水源地(高知)が、香川・徳島の予備のために水位が上下することへの反発が、政治の本体です。従前どおり発電も残すこと、補償を水源地に落とすこと、治水容量を削らないことが条件です。
提言7 海水淡水化を上水の最終層として置きます
雨と独立に水を増やす手段は、現実的には淡水化だけです。農業には使いません。規模の単位は、福岡地区水道企業団の「まみずピア」(海の中道奈多海水淡水化センター、日量5万トン、建設費約408億円、2005年完成)です。福岡は1978年と1994年に断水級の渇水を経験し、筑後川依存を海で切る保険として造りました。平時は絞り、渇水で増やします。2025年から2026年の福岡渇水でも、満転に近い運転をしています。
沖縄県の北谷町にも、日量4万トン規模の海水淡水化センターがあります。島の最終層として、ダムが細い年に動かします。オーストラリアのメルボルンは、2000年代の「ミレニアム旱魃」のあと、ウォンサッギに大型淡水化を造りました。最初の数年はほとんど動かさず、「高い保険料」と批判されました。いまは保険として定着しています。福岡もメルボルンも、通年の安い水ではなく、雨が止まった年の高い水です。香川もその位置づけにします。
香川が0%後に足りない上水は日量約16万トンです。5万トン1基ではその約3割、3基でほぼ埋まります。ただし立地が効果を決めます。
- 徳島・高知の太平洋側に1基ずつ置き、各自が使うだけ、なら、早明浦の減り(日約300万トン)の約3%です。0%を半日〜1日遅らせます。香川の蛇口はほぼ増えません。
- 高知1基は、高知分水(水道平均毎秒0.73トン=日量約6.3万トン)をほぼ代替でき、吉野川に水が残ります。残った水を香川の権利にしない限り、池田の取水は増えません。高知市はすでに三水源を持つので、「高知のため」では説明が弱いです。
- 香川を動かす条件は、(a) 戻した吉野川水を協定で香川が有償で買うか、(b) 真水を香川まで運ぶか、(c) 香川沿岸に置くか、です。
海水淡水化の主流は逆浸透膜(RO)です。目に見えない穴の膜に海水を高圧で押し、真水だけを通します。家庭用の浄水器の、産業版です。福岡では海水約10万トンから真水5万トンを取り、残りは塩分が約2倍の濃縮海水になります。電力は造水1トンあたり約3.5〜4キロワット時です。16万トン/日なら連続で約27メガワット。これは中規模の火力1機の数%ですが、猛暑で水力が止まった年に、淡水化も電力逼迫で止まったら保険になりません。「電力逼迫で淡水化を落とす」を協定で禁じ、本四の優先枠か隣接太陽光を付けます。スペインの地中海沿岸やイスラエルのアシュケロンも、都市用水の保険としてROを置き、農業には使い分けています。
香川の瀬戸内側について。濃縮水を海に一滴も戻さないゼロ液体排出(ZLD)は技術的に可能です。ゼロ液体排出は、工場や淡水化の廃液を海や川に戻さず、蒸発させて固体にする技術で、砂漠の工場では使います。ただし造水単価がさらに倍近くになり、固体塩は年100万トン規模で売り先がありません。日本の塩の生産・消費は百万トンの桁です。電気と熱がRO本体より重く、保険としての淡水化を値段で壊します。
現実解は福岡方式です。まみずピアは濃縮海水を和白の下水処理水と混ぜ、博多湾へ放流しています。博多湾は閉鎖性水域です。閉鎖性水域は、外洋との水の入れ替わりが遅い海や湖で、瀬戸内海、博多湾、東京湾が代表です。汚れも塩分の偏りも残りやすいので、放流の許可が厳しいです。下水で薄まりすぎた塩分を戻す、という説明で漁場と折り合い、少量は製塩・にがり用に売っています。香川でも「薄めて放流」なら物理的には置けます。門は瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)と、ノリ・ハマチの漁協です。瀬戸内法は、工場などの特定施設に許可制を敷き、かつては汚れの総量を減らすことが主目的でした。2021年改正で、きれいになりすぎてノリが育たない海域では、栄養塩を管理して戻すこともできるようになりました。塩分の局所スパイクは、栄養塩とは別の論点として、漁協との協議対象です。坂出・高松の奥部より、東かがわなど鳴門側の潮通しが良い海岸の方が通りやすいです。完全ゼロ放流は採りません。紀伊水道に面した徳島側に造り、真水だけ北へ送る方が、環境協議は楽なことが多いです。
農業について。水質が禁止条件ではありません。逆浸透の水は塩分が低く、川の水よりきれいなくらいです。障害はホウ素と、カルシウム・マグネシウム不足(添加で足ります)です。ホウ素は海水に多く含まれる元素です。人が飲む分には、通常のROで基準に入ります。柑橘や一部の野菜には、それより低い濃度でも毒です。イスラエルは最初の淡水化水で作物を傷め、淡水化側でホウ素を追加除去するようになりました。香川で淡水化を農業に回すなら、この追処理が必須です。都市用水だけなら、必須ではありません。使えない本体は量と値段です。香川用水の農業は年1.05億トン、ピーク毎秒11.3トン(日量約100万トン)です。5万トン基が20基要ります。造水100〜200円/トンは、水稲の水利費を破壊します。米1キログラムに水約3.6トンという試算があり、水代だけで米の値段が持ちません。果樹・施設園芸と、断水寸前の数週間だけが対象になり得ます。通年の田は、協定・ため池と、後述の再生水で持ちます。
建設費の福岡の実際は次のとおりです(利息を除く約408億円)。
| 財源 | 金額の目安 | 割合 |
|---|---|---|
| 国庫補助金 | 193億円 | 47% |
| 出資金(企業団=構成市) | 129億円 | 32% |
| 県補助金 | 32億円 | 8% |
| 企業債(借金) | 33億円 | 8% |
| その他 | 20億円 | 5% |
国庫補助金は、国の予算から地方の事業に出す金です。水道の水源開発は、通常は事業費の3分の1、渇水対策と認められると2分の1です。企業債は、自治体や企業団が施設建設のために出す借金で、返済はのちの料金収入から行います。水道は法律上、独立採算が原則です。税金ではなく、使った人が料金で賄います。福岡市の令和8年度予算では、企業団などへの受水費が59億円、水道料金収入が329億円です。淡水化の電気と膜は、この受水費経由で家庭の料金に乗ります。明細に「海水代」とは出ません。
国の補助は、福岡が1978年・1994年の断水実績で半分近くまで出してもらった枠です。四国が同じ枠を使うなら、2026年の制限と減圧給水が、その実績になります。運転は満転せず、川の水と混ぜ、渇水で増やします。いま膜とポンプの更新に、令和5〜8年度で約72億円を計画しています。電気が維持費の約38%、膜が約11%です。
四国も同じ型にします。建設の半分前後が国、残りが県と水道、電気と膜は料金です。平時は絞り、渇水年と太陽光の出力制御の時間に動かします。出力制御とは、昼間に太陽光が余って、発電を止めさせることです。四国は全国でも実施が多いエリアです。止める代わりに水を造れば、捨てていた電気が、0%後の日数に変わります。余った電気で水を造る運用は、電池と同じ負荷です。
比較対象の木曽川水系連絡導水路は、約40km超で事業費が890億円から2,270億円に膨らみ、完成は2030年代です。東京〜高松は直線でも約530kmです。中国の南水北調(長江から北京へ、半世紀と兆円規模)級の発想を四国に持ち込むと、兆円と30年で、水は増えません。利根川も2016年などに渇水します。2026年9月は、岡山の高梁川・旭川も取水制限に入りました。瀬戸内は同時に渇けます。隣県や東日本を予備に数えません。香川用水自体が「雨の多い山から管で移す」答えであり、足りないのは管の長さではありません。
提言8 電池は「水を空ける増分」だけを渇水予算で見ます
本川発電所(いの町、認可出力61.5万キロワット、満水ならフル出力で約10時間、約6ギガワット時、当時の建設費911億円)は、落差約560メートルの純揚水です。揚水発電とは、電気が余っているときに下の池から上の池へ水を汲み、必要なときに落として発電することです。電池と同じく電気を時間移動しますが、中身は水です。純揚水は上池に自然の流入がほとんど無く、稲村ダム(流域2.4平方キロメートル)がそれです。四国の昼間の太陽光余りを、近年は昼間に汲む運用に変わっています。奥多摩の葛野川、岐阜の奥美濃も同じ純揚水です。ギガワット時は電力量の単位で、100万キロワットの発電所が1時間出す量が1ギガワット時です。6ギガワット時は、月300キロワット時使う家庭に換算すると、約2万世帯の1か月分です。数時間の蓄電池なので、電池で代替できます。貯水式水力の「梅雨の水を夏の終わりまで持つ」機能と、水道の月単位の水は、電池では代替できません。水道の月単位の予備には、桁が足りません。
本川を電池に置き切ると、いまの電力用蓄電池の単価で約1,800〜2,500億円です。寿命15〜20年で、60年なら更新が3回乗ります。揚水は土木が残り、燃料も水もほぼ無料です。系統用蓄電池の国の補助は、すでに3分の1から2分の1です(経済産業省、GX経済移行債)。電気の便益がある資産を、渇水予算で100%買うと、利根川も木曽川も同じ請求をします。
本四連系で電気を買えるなら、渇水週の本川停止は連系で吸収できます。電池の国費一括は、この提言のリストから外します。稲村の水を最後の一回の予備にする(提言4)なら、その週の減電補償で足り、常時の6ギガワット時置き換えは要りません。
| 何のためか | 誰が払うか |
|---|---|
| 渇水の週に水を出す減電補償 | 国と香川・徳島(提言2) |
| 太陽光の昼余りを吸う電池 | 四国電力または蓄電事業者と、経産省補助 |
| 揚水を空けて水を予備に固定するために足す分 | 国と利水者 |
四国電力に電池まで出させると、協定が結べません。国が本川一式を渇水名目で買うと、一番高い手段を先に買うことになります。カリフォルニアが干ばつのたびに蓄電池を水予算で買わないのと同じで、電気は電気の財布、水は水の財布です。
提言9 やらないこと(比較して棄却します)
水力の全廃とダムの用途一括変更。 嵩上げが新設より安い、は一部正しいです。全廃は正しくありません。予備が本会計になり、季節をまたぐ電源と揚水を同時に失います。自流式は渇水時に流れも細いです。スイスが水力を止めないのは、水そのものより、時間をまたぐ調整力のためです。四国も同じです。
東日本からのパイプライン。 根本に見えて、水を移すだけです。木曽川導水の数十倍の距離と費用です。関東も渇水します。吉野川分水で徳島と香川が揉めたものの四県版より、重い政治になります。中国の南水北調は国家プロジェクトでも、着水まで半世紀近い時間と、移送先の水質・エネルギーを払っています。
香川の地下水増掘。 使えないのではありません。すでに使っています。高松付近で年約3,150万トン、丸亀・坂出で約1,850万トン(届出分)です。工業用水では半分近くです。讃岐うどんの名店が扇状地に集まるのは、そこの井戸が良いからです。花崗岩で保水が弱く、沿岸は塩水の縁です。戦後から昭和50年代は沈下し、坂出で32年に6センチ沈みました。いま沈静しているのは、条例で井戸を届け出させ、協議会が自主規制しているからです。0%後の16万トン/日は、届出揚水の合計に近いです。上乗せすれば塩水化が再発します。東京江東や大阪の地盤沈下も、止められたのは規制であって、井戸の増設ではありません。雨が無い年は涵養(雨水が地下に染み込むこと)も止まります。遅れ水の先食いです。
淡水化の通年農業利用。 水質は処理可能です。量と単価が水稲に合いません。
濃縮水のゼロ放流前提の瀬戸内立地。 立地を可能にする代わりに、保険を値段で壊します。希釈放流か、紀伊水道側に置きます。
岡山からの本格分水。 2026年9月、高梁川・旭川も取水制限に入りました。直島への僅かな受水はありますが、瀬戸内の隣県は同時に渇けます。
人工降雨。 2008年、気象庁気象研究所が早明浦上空で、国内として40年ぶりの大規模実験をしています。主手段にしません。効果の再現性が、政策の根拠に足りません。中国やアラブ首長国連邦の人工降雨も、ダムの代替にはなっていません。
地下貯留(ASR)と地下ダム。 ASR(Aquifer Storage and Recovery)は、豊水期の水を井戸から地下に押し込み、渇水期に汲み戻す技術です。砂礫層が厚い平野向きです。沖縄・宮古島の地下ダムはサンゴ礁の地質です。讃岐は花崗岩と薄い沖積層で、沿岸は塩水です。調査はしてよいですが、柱にしません。
協議会の新設。 既存の協議会と穴内川協定で足ります。箱を増やすと冬を逃します。
船舶による日量16万トンの輸送。 離島と、浄水場が止まった数日のための手段です。小笠原や伊豆諸島の渇水では船を使いますが、讃岐平野の上水穴は船では持てません。
提言1〜8に足す、未着手だった手段
大型新ダム以外で、協定のうしろに置くべき手段です。効く順です。
下水再生水を田とため池へ(イスラエル型の香川版)。 イスラエルの農業の主水源は、都市の処理下水です。淡水化水が間接的に回る分について、ホウ素基準を厳しくした、という順です。高松の再生水は福岡下水処理場日量500トン、東部下水処理場1,400トンで、水洗便所が主です(令和7年時点で64施設)。多度津町は金倉川浄化センターから最大日量1万トン、うち農業2,000トン・375ヘクタールという計画があります。農業集落排水は、ため池還元が既にあります。1,000人規模で日量約270トン、年約10万トン、大規模ため池一箇所分です。都市の下水を高度処理して農に戻せば、香川用水の農業を減らせ、ダム水を上水に残せます。淡水化を田に使わない、の本命の代替です。水質(塩類、医薬品)と消費者の受容が壁です。シンガポールのNEWaterは飲み水にまでしていますが、香川ではまず田とため池でよいです。東部下水処理場級を農業還元に拡張する方が、瀬戸内に淡水化を置くより漁協は楽な可能性があります。福岡市も再生水を雑用水に使っており、淡水化と再生水は対立しません。重ねます。
農業水利の一時買い上げと、耕作放棄分の転用。 カリフォルニアの干ばつでは、都市が農業者から当年の水を買う契約が繰り返し使われました。2014年頃の西海岸旱魃では、1トンあたり数十円からそれ以上の値が付いた年もあります。香川でも、渇水段階に応じて土地改良区から上水へ水を移す有償契約が、淡水化3基より安く0%後の穴を縮める可能性があります。番水の強化と一斉落水も、補償付きなら既存の慣行の延長です。一斉落水は、一定の期間、田の水をまとめて落とすことです。元は収穫前の作業ですが、渇水時には上流と下流で水を融通する手段にもなります。平時の水利権転用(耕作放棄・転作で使っていない農水を上水へ)は、人口減の香川では本丸になり得ます。耕作放棄は、田畑を作らなくなった状態です。水利権だけが残っていると、使わない水がダムから出され続けます。権利の整理は、ダムを増やすより先にできることがあります。新しい水ではなく、権利の付け替えです。「農を捨てるのか」には、捨てるのではなく、渇水年の数週間を買う、と答えます。
工業の循環利用。 坂出の番の州、四国中央・新居浜の工業用水は、香川用水と銅山川の大口です。製紙・化学は回収率を上げる余地があります。北九州の洞海湾コンビナートや、岡山の水島も、工水の循環は渇水のたびに論点になります。企業の設備投資なので、補助金と排水規制で動かせば、ダムより早いです。
香川用水の改築への相乗り。 老朽化・耐震の予算は既に動いています。漏水対策と同時に、渇水時の通水能力と調整池の取り出しを上げます。新しい事業名を増やしません。東京都の金町・朝霞も、更新に合わせて危機時の融通を厚くしています。
統合の渇水運用室。 水資源機構、四国電力、J-POWER、香川用水、徳島用水が、貯水率10%で同じ画面を見ます。利根川ダム統合管理事務所や、淀川のダム統合操作が先例です。紙の協定が半日遅れて現場に届く、を防ぎます。
渇水料金(工業用水・大口径)。 制限の前に値段で需要を落とします。家庭は政治的に難しいですが、工水は可能です。オーストラリアの都市(アデレード、パース、メルボルン)は、制限段階に応じた料金を使っています。0%を1日遅らせる効果が、上流ダム1基分の放出に相当するなら、安いです。
ボトルネックと突破
| 壁 | 中身 | 突破 |
|---|---|---|
| 操作規則が間に合わない | 河川法の改正は年単位 | 今冬は覚書。規則は追認 |
| 電力の拒否 | 無償放出は繰り返せない | 代替調達の実費。上限を残す |
| 予備を早く使えという政治 | 減圧給水の夜にリングフェンスが壊れる | 二層化。上水専用を先に広報 |
| 台風直後の空撃ち | 2005年は0%の翌日に満水 | 72時間の気象停止条項 |
| 県同士 | 余った水は自動で香川に来ない | 徳島淡水化先行と有償振替 |
| 水源地 | 高知がタンク役を強いられる | 所在町村基金。治水は触らない |
| 原水の質 | 低水位はマンガン・濁り | 低水取水と浄水の待機。死水ポンプ |
| 漁協 | 瀬戸内の塩分・ノリ | 希釈放流。鳴門側。第一基は紀伊水道。再生水農業は内陸 |
| 淡水化と電力逼迫 | 27メガワットを猛暑に落とされる | 止めない契約。本四優先 |
| 料金 | 淡水化の電気 | 通年満転しません。国は建設の半分まで |
| 時間 | 土木は10年単位 | 今冬の覚書が、今年と同じ冬を次に防ぐ本体 |
| 予算官庁 | 水は国交省、電池は経産省 | 渇水補償は国交省。電池全額を水に載せない |
| 世論 | 「ダムを水道にすれば足りる」 | 予備を本会計にすると薄くなる、を先に言う |
最大の壁は技術ではありません。回復した翌年に、例外を原則へ書く政治的意志が消えることです。工程の第一行を「今冬の協定」にする理由はそこにあります。
工程
| 時期 | すること |
|---|---|
| 2026年冬 | 覚書(自動発動、72時間停止、代替調達の補償、水質、徳島・高知の対価)。穴内川協定の更新。ため池融通の雛形。農水買い上げの単価表。渇水運用室 |
| 2027年 | 再生水の農業還元の拡張設計。工業循環の補助。死水・低水取水とマンガン処理。堆砂の捨て場。香川用水改築への渇水仕様。本四の渇水時電力枠。淡水化の立地比較と漁協事前協議 |
| 2028年以降 | 協定に書いた予備の運用実績を公開。低い位置の取水。堆砂除去の着手 |
| 2030年代前半 | 需要地タンク・ため池ネットワーク。淡水化1基目(紀伊水道または鳴門側。権利振替付き。渇水時満転)。権利振替が無い基は香川効果を見込まない |
| その後 | 必要な地点だけの嵩上げ。電池は四電の系統対策として並走 |
量の目安です。協定は、0%後の日数を、発電用水1週間前後に上流ダム分を足します。穴内川760万トンは、毎秒2トンなら日約17万トンで、量としては数十日分ですが、実際の持ちは放流レートと河道で決まります。宝山湖300万トンは、香川の緊急16万トン/日で約19日です。淡水化5万トンは、香川の穴の約3割を、雨と切って足します。再生水と農水の買い上げは、その穴そのものを小さくします。
早明浦の利水1.66億トンそのものを置き換える手段は、この提言のどこにもありません。置き換えません。尽き方を遅らせ、尽きたあとを層にします。
負担原則
- 協定と減電補償 … 国と香川・徳島(必要なら四県)です。電力は受け取る側です。
- 需要地タンク、低水取水、堆砂、嵩上げの渇水予備分 … 多目的ダムのアロケーションです。渇水目的は国と利水者です。
- 淡水化建設 … 国おおむね2分の1(渇水認定)、県と水道事業者が残りです。福岡型です。
- 淡水化の電気・膜 … 水道料金です。平時は絞ります。
- 系統用電池 … 四国電力または蓄電事業者と、経産省補助です。水を空ける増分のみ、国交省と利水者です。
- 再生水・工業循環・農水買い上げ … 下水道と農林、企業補助です。ダム予算に混ぜません。
四国電力に電池とダム放出の両方を自己負担させると、提言1が死にます。国が電池と淡水化を全額出すと、目的と額がずれ、他地域の先例になります。半分まで国、運用は受益者、が福岡で動いている線です。
一文で
四国に必要なのは、新しい山のダムでも、本州からの管でも、水力の廃止でもありません。既にある発電の水を、貯水率で自動的に、補償付きで、予備として出す協定を今冬結び、需要地のタンクと上水の淡水化、再生水と農水の買い上げをそのうしろに積むことです。工事は、協定の「この水は触らない」が先に無いと、予備を厚くせず、本会計を大きくするだけに終わります。
新しい大型ダムより早い、という点について
新設の大型ダムは、構想・調査・環境影響評価・水源地対策・用地・本体で20〜30年が通例です。水没世帯、治水と利水の負担割合、県負担の再協議が発生します。八ッ場ダム(群馬)は計画から完成まで約70年、本体着工からでも長い年月を要しました。徳山ダム(揖斐川、岐阜)も計画から半世紀近い時間を使いました。熊本の川辺川ダムは、半世紀の反対のあと、治水目的に絞って再開したばかりです。新ダムの本体工事より、合意の方が長い、というのが日本の標準です。
早明浦自体、着工から管理開始まで約12年、計画を含めればそれ以上です。再生事業でさえ完成は令和10年度目標で、なお削孔中です。木曽川導水は約40kmで2,270億円、2030年代です。
この提言の本体は覚書です。設備は既にあります。2005年・2008年・2026年に、同じダムから実際に水を出しています。やったことを、例外から原則にするだけです。それは冬に書けます。補償の支払いも、次の放出の週から発生します。再生水、休耕買い上げ、工業循環、ため池のポンプは、用地買収なしで1〜5年です。
淡水化は福岡で、事業年度平成11〜16年、約6年で日量5万トンを足しました。環境影響評価と漁協で延びても、新ダムより短いです。イスラエルが地中海沿岸に大型ROを連ねたのも、新ダムより「雨に依存しない層を足す」方が早い、という判断でした。シンガポールがNEWaterと淡水化を選んだのも、隣国からの輸入と貯水池だけでは持たない、と見切ったからです。メルボルンも、旱魃のさなかにダムを新造するより、海の保険を先に買いました。香川の地理はシンガポールほど極端ではありませんが、「山の雨待ちを20年続ける」より、海と下水と協定を先に積む方が、同じ種類の判断です。
嵩上げだけが10〜20年で新設に近づきます。だから嵩上げを本丸にしません。本丸は、既に存在して、今年も使おうとしている水を、来年以降も同じ条件で出せることです。
新しい山を一つ増やすより、既にある湖の出し方を先に決める方が、工期でも費用でも政治でも早いです。新ダムが将来必要になるかを、この提言は否定しません。否定するのは、新ダムが完成するまでの20年を、今年と同じお願い運用で空けることです。
主な根拠数値
- 早明浦:総貯水3.16億トン、洪水期利水1.66億、発電0.26億、死水0.10億。新規開発は年8.63億トン
- 四県配分:徳島4.10億、香川2.47億、愛媛1.67億、高知0.39億
- 2026年緊急補給:徳島毎秒1.95トン、香川毎秒1.85トン(日量約16万トン=25メートルプール約380杯)。宝山湖300万トン(約19日)
- 穴内川:総貯水4,626万トン、渇水協定760万トン
- 本川:61.5万キロワット、約10時間、約6ギガワット時(家庭約2万世帯の1か月分に相当)
- 本四連系:物理240万キロワット、運用は四国向き約120万キロワット規模
- まみずピア:日量5万トン、408億円、国庫47%。沖縄・北谷は日量約4万トン規模
- 木曽川導水:約2,270億円、約40km超
- 香川地下水(届出):高松約3,150万トン/年、丸亀・坂出約1,850万トン/年
- 高松再生水:日量約1,900トン(福岡+東部)。多度津計画:最大日量1万トン(うち農業2,000トン)